2013年4月11日木曜日

書家が見るフォント2


――前回はフォントの見本帳を見ていただいて感想を伺いましたが、今回は文字を組んだもの(組見本)を見た感想を伺いたいです。本文用でよく使われる書体の組見本をいくつかお持ちしました。
(今回用意した組見本は13級ベタ組み、行送り23歯のもので、書体はイワタ明朝オールドR/リュウミンL-KL/リュウミンL-KL+L-KO/游明朝R/秀英明朝L/筑紫明朝R/筑紫明朝オールドR)

神林:僕がぱっと見て読みやすいなと思うのはイワタ明朝オールドかな。

――本文用書体として書籍関係のデザイナーから評価の高い書体ですね。確かに「読みやすい」といわれていますし、格調高いとも評価されています。

神林:なんとなくぱっと見て読みやすいものから読めって言われたらイワタ明朝オールドが好きですね。ごちゃっとしてないというかね。線が細いのかな。あとはリュウミンL-KLがいいかな…。読みやすい。

――リュウミンL-KLは小説より新書などにあった書体だと思います。漢字と仮名の大きさが揃っていたり、モダンなデザインで小説には合わない気がします。

神林:僕は活字を意識して比べたことは無いけれども、小説と新書では使ってる活字が全然違うの?

――違うことが多いですね。一般的には用途・内容ごとに変えた方がよいとは言われています。筑紫オールドは、前回お見せした書体見本では先生が一番よいと言われたものですが、文章に組むと印象が違いますか。

神林:そうですね。筑紫明朝は組んだときはオールドよりも普通の筑紫明朝の方がいいかな。

――筑紫シリーズは、まだ書籍では使われている実績が他の書体よりも少ないので、見慣れていないというのもあるかもしれません。

神林:いやぁ、本の活字書体は全然意識したことがなかったなぁ。
ただ、印刷がかすれてるとかその辺のところは意識していたけれども。

――活版印刷の時は印刷会社ごとに活字が違ったので、その印刷会社に頼まないと出来ないということがありました。今はデジタルなので、出版社ごとに選んだフォントがほぼわかるようになりました。

神林:じゃあ昔はある出版社だったらどんな本でもその出版社の活字だった?

――そういう傾向はありますね。パソコンが普及してきた頃というのは、今までのグラフィックデザインの文化が一度断絶したんですよね。ようやく技術が上がってきて伝統的な技法や昔の名作書体も使えるようになってきました。それこそ、古い明治とかの活版時代の書体とか。

神林:これからは本をぼーっと読まないで、これは何のフォントをつかっているかということを意識して読まないといけないな。この本の内容に合っているかどうかとか。



  (聞き手/編集:加納佑輔|株式会社ソウサス意匠部)



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