——個人的に非常に気になっていることが、書家には活字(フォント)がどのように見えているかということです。今日は時間がないので、デザイナーがよく使う主要な明朝体いくつかと、書に近い毛筆体の見本をお持ちしました。(※今回持参したのは、モリサワ、フォントワークス、字游工房、イワタ等の書体見本)
今回持参した各社の書体見本
——まず、いくつかの毛筆体を見ていただきたいと思います。
神林:みんな縮こまった字に見えますね。小さく纏まってしまっている。わざとらしい感じもするね。これでは明朝体の活字の方がいい。
——個人的にはイワタの弘道軒清朝体がかっこいいと思うのですが、どうでしょう。
神林:確かにかっこいいね。これはかなりの書家が丁寧に書いた感じがする。それでもいやらしい所がありますね。かっこつけすぎというか。実際の筆字ではこんな風にはならないなあ・・・と思います。不自然ですね。
弘道軒清朝体(イワタType Libraryより)
——では、明朝体はどうでしょう。普段本や新聞などを読んでいて、これはいいなっていう書体はありますか?
神林:朝日新聞の書体はいいな、と思います。
——本日お持ちした明朝体ではどうですか? どれもデザイナーの間では一定の評価を得ている書体ですが。
神林:これとこれは特にいいね。
——筑紫明朝Lと筑紫オールド明朝Rですね。
筑紫オールド明朝R
筑紫明朝L
神林:これ(筑紫オールド明朝R)は特に好きですね。「永」なんかはものすごいいい字だなぁ。
——具体的にどこがいいのでしょう? バランスですか?
神林:レイアウトとバランス。あと筆字の使い方をとても上手く表現していますね。力を入れるところはぶわっと太くなって、筆を入れるところは細くなって、最後に力を抜いて行くという。このまま書道のお手本にできそうな感じです。
——筑紫オールド明朝は私も好きでよく使います。他には気になる書体はありますか
神林:これ(秀英初号明朝)も好きですね。こっち(リュウミンL-KL)は普通な感じですね。オーソドックスなものとして悪くない。
リュウミンL-KL
——リュウミンはパソコンで本を作るようになってから一番使われているので、見慣れているというのもあると思います。
神林:そうですね。当たり前なんだけど読みやすいんだよね。ざっと見た感じだとそんなところかな。
——筑紫明朝はけっこう最近に出た書体なんです。新しい書体が評価されるというのは意外であり、とても興味深いです。
神林:どんどん新しい書体が出てるんだね。
——今回お持ちした書体見本は、比較的大きなサイズで組まれたものなので、長文で組んだ状態で見たらまた印象が変わるかもしれません。書体に関してはもっと見ていただきたいのですが、時間がなくなってしまいましたので、今回はここまでです。ありがとうございました。
(聞き手/編集:加納佑輔|株式会社ソウサス意匠部)
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筑紫書体を設計させて頂いてます藤田です。書家の方に好評をいただきとても光栄です。今後とも更に精進してまいります。
返信削除>藤田 様
削除コメントありがとうございます。神林先生にも伝えておきます。私自身、筑紫書体は好きでけっこう使わせていただいてますが、70代のベテラン書家の先生がぱっと筑紫書体二つを選んだのは、新鮮な驚きでした。筑紫オールドの新書体、楽しみに待ってます。
(加納佑輔|総佐衆意匠部)